通院の記録

メガバクテリア症 8
   
− 困 惑 −
ボクは、一体
何だったのですか?
  何をそんなに怒っているのですか?


2007年3月3日(土) 8回目の診察



「お願い、もう出ないで」と、祈るような気持ちで診察室へ入った。
この日の診察室は、初めての広い部屋だった。キャリーをバッグから取り出すと、いつもとは違う雰囲気に驚いたのか、ヤッピーは興奮気味だ。

「最近、よく食べるようになりました。」
と、まず報告する。この1週間、ヤッピーの食餌量は6g弱、それまでより1gほど増えていた。
チェリーの食餌制限のおかげで、鳥3羽全員の食餌量測定が日課になっていた。

「やっぱり、お腹の調子が良くなったのかな?」

と言いながら、先生はヤッピーを取り出そうとしたが、ヤッピーは機敏に逃げ回る。逃げることは、ヒナの頃からの得意技だ。

「動きも良くなりましたね・・・」と先生。
(いえ、今日は興奮しているだけですって・・・)

体重は27g。

「そんなには増えてないですね・・・・・でも、そうなるとヤッピーちゃんも太りすぎに注意しないといけませんね。」

今は体重も食餌量も毎日測っているから大丈夫だろうと楽観視していたが、確かに要注意だ。

「フンの状態(外観)も、非常に良いですね。」と、おほめに与る。


「ヤッピーちゃん、もうウサギさんのところには行ってないですか?」と、先生は顕微鏡を見ながら聞いてきた。

「いえ、今までと特に変わりませんけど・・・」
このところ、仕事で帰宅時間が遅くなっていたので、その分、放鳥タイムは短めであったが、2羽連れ立って、ウサギ領へ遠征に行く姿を何度か目撃していた。昨日も、ウサギケージの上でたむろしていて、ゴブにどやされていたところだ。

「そうですか・・・。牧草から酵母のたぐいを常に取り込んでいて・・・と、そういうことも考えられたものですから・・・。」と、先生。

あれ? 何だか振り出しに戻ってしまったような・・・。

“ワラには納豆菌のようなものが付いていて・・・”という話。それはそうだろうけれど、だからと言って、それが文鳥に悪さをするなんてことは、信じていなかった。

私が家にいる時間が短いので、ウサギも鳥も同じ空間に置いてやりたかった。メガバクテリアなら、牧草は無実だからと、“メガバクテリアを強く疑う”と言われた時点から、ノーマークであった。
どうして、今頃そんなことを言われるのか・・・私は困惑した。


「ウンチはきれいです。今日は、もう注射はしません。・・・ただ、餌にもそういったものが付いている事がありますから、皮付き餌に戻すと、また出ちゃう可能性があります。」

これは“メガバクテリアではなかった”と言っているも同然だ。恐る恐る聞いてみる。
「以前、言っていた“らしきもの”もないという事ですか?」

「全くありません。ペレットに変えてから劇的に変わったんです。・・・お腹の調子がずっと悪かったのかもしれません。」

一気に脱力してしまった。
ヤッピーの今までの苦労は何であったのか? 
嫌いなお薬を毎日2回、隔週で通院、痛いお注射・・・もう3箇月続いている。もし、これが無害な酵母であったと言われるなら、私はヤッピーに大変な事をしてしまったことになる。

ヤッピー、申し訳ない・・・。

嬉しいはずの結果に、すっかり打ちのめされてしまった。聞きたいことは、たくさんあるが、どうしても口から出てこない。

“お腹の調子が悪かった”で片付けられては立つ瀬がないではないか!?


「気に入んにゃあ!」

「ペレットだと、それだけになってしまいますから、エンリッチメントということを考えますと、欲しがるときには時々、皮付き餌もあげてください。カラをむく楽しみもありますから・・・」と言う先生に、

「皮付き餌もあれば、すごく欲しがりますけど、なきゃないで平気なんですけどね・・・」と答えながら、もう皮付き餌を与えることはないだろうと思った。

餌のせいだなんて信じがたいが、それを食べると具合が悪くなるかもしれない子と食餌制限の子に、与える勇気は私にはない。

エンリッチメントを言っている場合ではない。

お薬をやめると、また出てきちゃうかもしれませんから、その後もフンの検査はしてください。ヤッピーちゃんも、今回の通院は大変ストレスがかかったと思いますから、もっと近いところがよければ別の病院でもかまいません。・・・」

前回もそう言われて、ちゃんと返事していなかったことを思い出し、これからも、この病院でお世話になりたいとお願いした。


治療が終了しようというこのときになってまた、振り出しに戻ってしまった。それほどまでに微妙なものならば、継続して同じ病院にかかるしかない。それに、今回、骨身にしみて懲りてしまった。ちょっとでも、病気を疑う兆候があったのだから、初めから専門病院に行くべきだったのだ。

一般の獣医さんと鳥の獣医さんでは、鳥の扱い方も雲泥の差だ。ヤッピーは、鳥の先生に診ていただいて、確かに喜んでいた。決して、ストレスばかりではなかった。





その後、ヤッピーはさらによく食べるようになり、性格がきつくなったように感じられた。チェリーは完全に蹴散らされている。どうしたのだろう?

日々の投薬は続けていたが、以前はすぐに捕まって素直に飲んでくれていたのが、“もう、飲まなくたっていいんだろ?”といったような態度をとる。最終的には、ちゃんと飲んでくれるからいいのだが、ヤッピーの変わりように戸惑うばかりであった。




* * * * * * * * * * * * * *



一体、これはどういう事だったのか? 事の始めから順を追って何度も考え直してみた。

日々の食餌量データを週単位で集計し、控えてあったメモと照らし合わせてみた。
食餌量の記録は、将来、胃障害が現れたとき、いち早く兆候をつかむために必要な事であろうと、チェリーのダイエットのついでにつけていたものだ。

データを見る限り、初期段階での治療の効果は餌の量に関係なく現れていたようなので、少しほっとした。


ヤッピーの食餌量と治療経過

期 間 平均食餌量 (g)
ペレット/皮付餌(合計)
備 考
12/2-12/ 8 -  12/2 初診 経口投与開始 (チェリー、12/3 別居、12/5ダイエット開始)
12/9-12/15  2.6 / 2.7 (5.3)  12/15 体重 28.0g
12/16-12/22  2.0 / 3.4 (5.4)  12/16 診察 〔メガバクテリアを強く疑う〕 注射  経口薬を1回2滴に増量
 12/22 体重 27.5
g
12/23-12/29  1.8 / 2.9 (4.7)  12/23 診察 注射 〔注射の効果あり〕
12/30- 1/ 5  2.1 / 2.8 (4.9)  12/30- 1/4 帰省  
1/ 6- 1/12  2.4 / 2.4 (4.8)  1/6 診察 注射  (チェリー、ダイエット終了)  1/12 体重 27.0g
1/13- 1-19  2.4 / 2.6 (5.0)  1/19 体重 26.5g  換羽(抜け始め)
1/20- 1/26  2.7 / 1.9 (4.6)  1/20 診察 注射 〔治らない可能性が高い〕 1/26 体重 26.5g
1/27- 2/ 2  4.5 / -  (4.5)  1/27 ペレットへ完全移行  1/31 体重 26.0g
2/ 3- 2/ 9  4.7 / -  (4.7)  2/3 診察 注射 〔メガバクテリア2本〕  2/8 体重 26.5g
2/10- 2/16  4.6 / -  (4.6)  2/14 ボレー粉・塩土 止  2/15 体重 26.5g
2/17- 2/23  4.9 / -  (4.9)  2/17 診察 注射 〔メガバクテリア消失〕  2/23 体重 27.0g
2/24- 3/ 2  5.5 / -  (5.5)  3/1 体重 27.0g 
3/ 3- 3/ 9  5.4 / -  (5.4)  3/3 診察  3/9 体重 27.5g
3/10- 3/16  5.7 / -  (5.7)  3/16 体重 28.0g
  3/17 -  3/17 診察 治療終了
  皮付餌の給餌量は徐々に減らした(12/9 - 1/26)。



治療初期に食餌量が減っているが、チェリーのダイエットに付き合って減少してしまったのであろう。食べる速度は、断然、チェリーの方が速い。その上、チェリーは量を減らされているから、あっという間に食べ終わってしまう。チェリーが食べ終わってしまうと、ヤッピーは“何だ、もう終わりか”といった感じで食べるのをやめてしまう。チェリーの餌がなくなってしまったときには、自分も食べるのを遠慮していた。

食餌量と体重は、ほぼ相関している。
不思議なことに、2月24日以降、食餌量が増えている。17日の診察のとき、メガバクテリアが消えたという事で、獣医さんとの会話がちょっと盛り上がっていた。ひょっとすると、ヤッピーは、はずんだ雰囲気を感じ取って“そうか、治ったんだ!”なんて思って元気が出てしまったのかもしれない(かなり強引な憶測)。


ただ、獣医さんが言っている事も分かるような気がしてきた。そもそも、ヤッピーにはメガバクテリアの感染原因がなかったのだ。2年前に健診を受けたときは白だったのに、その1年半後に突然、現れた。原因は分からないけれど、そこに見えているものはメガバクテリアに非常に類似している・・・という事で、メガバクテリアと見なして治療を始めたのであった。
それが、飲み薬でも注射でも落ちなかったのに、餌を変えたとたん、きれいさっぱりなくなってしまった。“餌が原因だったのではないか?”と疑うのも自然な流れだ。


* * * * * * * * * * * * * *


数日後、私は大変な事を思い出した。一昨年の健診後、皮付き餌のメーカーを変えていたのだ。まさかとは思うが、結構ポイントが高いのではないか? ちょっと、あわてたが、仕方がない。それにしても、1年半もの間、お腹に合わない餌をあげていたのだとしたら・・・と思うと、ぞっとした。





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